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バーンズ博士の執念

自宅から10キロと離れていないフィリー郊外の高級住宅地メリオンに、バーンズ・コレクションを再び訪れた。今年初めにウォートンの同期夫妻と訪れて以来の2度目の訪問。

バーンズ

フランスの印象派・後期印象派のコレクションとしては世界最大級。ルノアールの作品が181点、セザンヌ69点、マチス59点(と彼が描いた巨大な壁画)等々。他にもピカソ、スーティン、ルソー、モディリアーニ、ロートレック、ゴッホ、ゴーギャンなどなど。フランス各地で彼らの名を耳にするにつけて無性に行きたくなり、フランス滞在中に予約しておいた(決まった曜日にしか開館せず、しかも駐車場を含めて完全予約制)。

アメリカに発つ直前に訪れたオルセー美術館は最上階が印象派・後期印象派のフロアになっていて、収められている作品群としてはちょうどバーンズ・コレクションと対応している。ただしその展示方法は全く異なる。

ほぼ作者ごとに展示室が分かれ、直立した人間の目の高さに作品を並べるオルセー美術館(を含む一般の美術館)。

ゴッホ2

一方のバーンズ・コレクション。

バーンズ展示

大小20余りの部屋の壁一面に、作者や年代を越えて作品が所狭しとちりばめられている。最初に訪れると間違いなく度肝を抜かれる。家具を含めた全ての芸術作品の配置は、これらを収集したアルバート・C・バーンズの判断によって決められ、彼の遺言により今に至るまで手を加えられていない。

ちなみにこれらの作品は、消毒薬の開発で財を成したアルバート・C・バーンズが主に20世紀の前半に個人で収集したもの。フランスで読んだこの本には、労働者階級の家庭から成り上がったアメリカ人であるバーンズが、フランスの画商から膨大な芸術作品を買い漁っていく様子や、彼が頑固者にして論争を好む毒舌家で、周囲とのトラブルが絶えなかったエピソードが記されている。彼はペン大の医学部を卒業しているが、母校のアートスクールとも芸術教育の提携をめぐって随分と争ったようだ。こうしたストーリーを頭に入れて訪れた今回の訪問は、前回よりも俄然面白かった。

悪魔と呼ばれたコレクター―バーンズ・コレクションをつくった男の肖像悪魔と呼ばれたコレクター―バーンズ・コレクションをつくった男の肖像
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彼はこの施設を「美術館」として認知されることを一貫して拒み、芸術を通じた教育のための施設として位置づけていた。作品の配置も彼のこうした哲学によるものだ。バーンズの長年の友人であった哲学者ジョン・デューイがここでの教育プログラムの講師を務めていたほか、バートランド・ラッセルも一時期ここでの授業を受け持っていた。バーンズ自身も芸術作品の鑑賞方法を教えていた。

2回目の訪問でずっと感じていたのは、作品群のすごさよりも、バーンズという一人の人間のエネルギーだった。単なる金持ちが趣味で収集したコレクションではなく、何かに取り憑かれた人間の執念の成果。彼を批判した芸術界への対抗心、上流階級や支配層への反発心、芸術教育への情熱など、彼のエネルギーの源はいろいろあったと思う。そんな彼のパワーに触れていると、何だか前向きな気持ちが生まれてくる気がした。

今回の訪問では、前回よりずっと興奮していない自分に気づいた。(芸術作品に限らず)見慣れて日常の生活の一部になってはじめて分かることってあるんだろうな、なんてことを漠然と思っていた。この膨大な作品に囲まれて生活していたバーンズ博士がどんな芸術眼をもつに至ったのか、とても興味深い。

それからその作品が生み出されたフランスの風景を思い出していた。3ヶ月弱とはいえフランスでの滞在であの土地の空気感のようなものが随分と染みついたようだ。

遺言で作品の一切の持ち出しを禁じたバーンズの意志に反し(1994年に上野の国立西洋美術館に110万人を集めた「バーンズ・コレクション展」が開かれたのは裁判の結果のこと)、2011年以降、ここの作品はフィリー市内の現在建設中の新しい建物に移される予定だ。新しい「美術館」でバーンズという人間を感じるのはもはや難しいだろう。ここにいる間にあと何回か足を運ぼうと珈琲妻とは話している。
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2009/07/30(木) | 生活 | トラックバック(0) | コメント(0)

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