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インターネットの規制をめぐる考察(4)

前回の続きを。

「エンドツーエンド」原則を守るかどうかと「ネット中立性」規制を設けるかどうかの、合計4つの組み合わせにおける最後のパターン。

D: e2e原則を守らない/ネット中立性の規制を設けない
ネットワーク設計としてe2e原則に縛られる必要はなく、ネットワーク内部に追加的に各種コントロール機能を実装させることはネットワーク提供事業者の判断に委ねられるべきだ。それらの機能を利用して、(既存の法律や規制が許す範囲において)ネットワーク提供事業者がアプリケーション等の優先的な取り扱いを行うことを少なくとも事前に規制しない。問題が発生すれば、司法がケースバイケースで事後的に規制すれば足り、むしろそれが望ましい。

これはまさにYoo教授が強く主張するポリシーだ。「ネットの中立性」に反対する、というフレームだとどうも直感的に否定的な反応をしてしまいがちだが、彼はむしろ「ネットの多様性(Network Diversity)」を推進する、という言い方をすることも多い。

彼は、e2e原則をインターネットに強制的に適用することを正面から否定する。論旨は以下のとおり。

● 古典的なe2e原則を拡大解釈してはならない。e2e原則のソースとして引き合いに出されるSaltzer、Reed、Clarkによる「End-to-end arguments in system design」においても、e2eの議論は絶対的なルールというよりも、ガイドラインとして位置づけられている。("Thus the end-to-end argument is not an absolute rule, but rather a guideline that helps in application and protocol design analysis")

● e2eに関する議論は、費用対効果の分析を離れて、イデオロギー闘争に入りがちである。

● e2e原則の推進者は、必ずしも信頼性(reliability)と性能(performance)のトレードオフを十分に考慮していない。またこのトレードオフは、ネットワークに対する需要の変化によってダイナミックに変わるものである。

● e2e原則は一部のアプリケーションとの間では不整合が生じている。具体的には、リアルタイム性を必要とするようなアプリケーション(VoIP、ビデオチャット、オンラインゲーム)、帯域を大きく消費するようなアプリケーション(ビデオストリーミング)などである。

● インターネット上で提供されるサービスの中には、セキュリティ拡張性をより必要とするものがあり(例:電子取引)、これはネットワークに知性を与えることを正当化する需要側の変化である

e2e原則を規制によって強制することは、結果としてインターネットをこの原則に適した一部のアプリケーションの側に歪曲させてしまう危険性をはらんでいる

Yoo教授のこれらの主張は、ここに詳しい。
Christopher Yoo "Would mandating broadband network neutrality help or hurt competition? A comment on the end-to-end debate"
http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=495502

(続く)
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2009/12/16(水) | インターネットの規制をめぐる考察 | トラックバック(0) | コメント(5)

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Rion

『いいポストですね』

ネットワーク中立性に関する問題の一つはレッシグの主張が数理モデルかされていないことです。自由なアーキテクチャーがイノベーションを推進することは感覚的には明らかなのですが、経済モデルとしては確立されていません。そのため費用便益分析ができません。それに対して、混雑料金の話は古典的な交通経済学なので計算できます。

もう一つはこの問題は、ISPの間で十分な競争があればそもそも生じないのではということです。アメリカでは何かと議論されますが、日本では全く耳にしないのはこのせいだと思います。

2009/12/16(水) 03:06:12 | URL | [ 編集]

珈琲男

『コメントありがとうございます』

確かにレッシグの主張は直感的には魅力あるもののように感じるのですが、ネット中立性を追求することの費用便益をどう分析するかについての突っ込んだ議論までは展開できていないようですね。

一方Yoo教授は、(シカゴ学派による)垂直統合の効果やtwo-sided marketの経済など、ネット中立性の議論の正当性を減じる経済学的な「切り口」をいくつも提示しているものの、それらを統合したモデルまでは提示できていません。

ネット中立性の経済学的な効果が立証されない以上、まずは少なくとも事前規制しない方向で整理するというのは理にかなったやり方のようにも思われます。

一方で、この議論は必ずしも経済学的な議論として認識されているわけではないからこそ、一筋縄ではいかないのでしょうね。

2009/12/16(水) 04:28:30 | URL | [ 編集]

Rion

『難しいですね。』

>(シカゴ学派による)垂直統合の効果やtwo-sided marketの経済など、ネット中立性の議論の正当性を減じる経済学的な「切り口」

この手の話はどっちかが優位という話ではないのでここの問題についてモデルを立ててとならざるをえないですね。競争政策関係であれば、裁判で明らかになるんですが。。。

>ネット中立性の経済学的な効果が立証されない以上、まずは少なくとも事前規制しない方向で整理するというのは理にかなったやり方のようにも思われます。

ISPの寡占状態については規制が必要に思われます。特に自治体が独占を付与したケースについては問題が多すぎるように思います。

あまり日本でこの話を論理だって説明しているサイトはないので貴重ですね。

2009/12/16(水) 16:18:41 | URL | [ 編集]

Daiquiri

『No title』

面白いですね。経済的な分析とは少し観点が異なるのですが、
e2e原則の根拠の一つとして、①エンドポイントで
ソフトウェア等を開発する者はエンドポイントだけを見れば足り、ネットワークとの
関係でそのソフトウェア等が動くか心配する必要がない、
②技術的に色々な層の心配をする必要がないので、より多くの人の参加がエンドポイントでの開発に
参加でき、これがエンドポイントレベルでのイノベーションを促進する、
ということが言われると思います。そうだとすると、「エンドポイントでの開発者が
ネットワークの中身を気にしなくていい」という点を守りつつネットワークを多様化
することが技術的に可能なのであれば、ネットワークの多様性を認めてもいい
(Tiered Serviceを認めてもいい)という主張の根拠になっても良さそうな気がしているのですが、Lessigとかもあまりこの点について書いてない気もします。ネットワークを多様化すると
必ずエンドポイントの開発者がネットワークを気にする必要が出てきてしまうのかな、というあたりがいまいち分からないのですが、もしご存知でしたら宜しければ教えていただければ
嬉しいです。

2009/12/17(木) 08:19:14 | URL | [ 編集]

珈琲男

『タイムリーなコメントありがとうございます』

Daiquiriさん

タイムリーなコメントありがとうございます。ちょうどその方向で次のエントリーを書こうと思っていた。近々アップすると思いますので、そちらをご覧いただければと思います。

2009/12/17(木) 13:38:08 | URL | [ 編集]

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