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インターネットの規制をめぐる考察(6)

Daiquiriさんからタイムリーなコメントをいただいた。ちょうど何となく書こうかと思っていた方向だから、それを足がかりに。

e2e原則の根拠の一つとして、(1)エンドポイントでソフトウェア等を開発する者はエンドポイントだけを見れば足り、ネットワークとの関係でそのソフトウェア等が動くか心配する必要がない、(2)技術的に色々な層の心配をする必要がないので、より多くの人の参加がエンドポイントでの開発に参加でき、これがエンドポイントレベルでのイノベーションを促進する、ということが言われると思います。


ネット中立性の議論においてe2e原則を規制化しようとする人々は、レッシグも含めて、確かにそのポイントを挙げている。

実際、それこそがインターネットがこれまで発展してきた大きな要因の一つであることは間違いない。世界中のネットワークの「ロジック層」をシンプルなプロトコル(TCP/IP)でつなぐことにより、地球上のいかなる2地点間でもパケットの転送を実現する巨大なネットワークを作ってしまうなんて、本当にものすごいイノベーションだと思う(ARPANETの開発者が何をどこまで意図していたかは別にして)。ネットワーク側がシンプルかつ統一された原則で設計されることによりエンド側のイノベーションが促されたことも事実だし、シンプルな原則がネットワークの接続容易性を促して結果として世界中の人々に超低コストのコミュニケーションの手段や表現の機会を与えたことも事実だ。今更ながら全くもってスゴイことだと思う。インターネットに何らかの形で関わる人なら、これらの歴史を振り返ることでインスピレーションを得ることも少なくないだろう。

一方で、その逆に、

ネットワークを多様化すると必ずエンドポイントの開発者がネットワークを気にする必要が出てきてしまうのかな


というのも事実だろう。単に気にする必要が出てくるだけではなく、「ロジック層」にネットワーク提供事業者が所有権を有するプロトコルが使われた場合、そのプロトコルを学習するとか、(場合によっては)ライセンス料を支払うとかといったコストがアプリケーション開発者に発生することになる。エンドユーザの立場からすれば、アプリケーション開発者のコストが転嫁されることに加えて、インターネットの相互運用性が減じられること(e.g. 場合によってはうまく通信ができないこと)のコストを負担することにもなる可能性もある。

そこで考えを止めると、じゃあやっぱりe2e原則を規制化してでもインターネットの設計ポリシーとして保持していくのってありじゃない、と結論が出てきてもおかしくない。

でも、「ネットの中立性」に反対する人々は、e2e原則を規制化することが、インターネットに関連する今後のイノベーションの促進にとってもっとも望ましい政策なのか、そして、ユーザの多様なニーズにもっとも効果的に応えうる政策なのかを真に問うべきだと主張する。さらには、今後の需要の伸びに見合うだけの持続的な投資インセンティブをネットワーク事業者に与えられるか、というポイントもある。

要するに、「ネットの中立性」の問題には、トレードオフが内包されており、その関係を明らかにしないと、本当に意味のある議論はできないのだと思う。立場によって、前提条件、理論、そして最終的な目標がほとんど統一されていないのも、この議論がある意味混迷している理由だと思う

バークレーで経済学の博士課程のRionさんは、こうコメントして下さった。

ネットワーク中立性に関する問題の一つはレッシグの主張が数理モデルかされていないことです。自由なアーキテクチャーがイノベーションを推進することは感覚的には明らかなのですが、経済モデルとしては確立されていません。そのため費用便益分析ができません。


確かに、レッシグを含めて、ネット中立性を提唱する人々がその全体としての費用便益を数理的に明らかにしたうえでその主張を展開しているとは言いがたい。実際、誰もそれに手を付けられずにいるのかどうかまでは知らないけど、ものすごく難しいモデルであるのは確かだろう。

一方、「ネット多様性」を主張するYoo教授も、その主張における費用便益を数理化できてはいない。ネット中立性を規制化しようという大きな流れに対して、それが社会全体のために本当にいいことなのか実際には分からないことなんだから、少なくとも事前規制はやめて事後的にケースバイケースで対応しよう、というが彼の主張だ。そして、全体モデルを提示できないものの、「ネット中立性」の正当性を減じるような切り口をいくつも挙げている。

それの切り口については、多分次のエントリーで。

(続く)
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2009/12/17(木) | インターネットの規制をめぐる考察 | トラックバック(0) | コメント(2)

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Daiquiri

『No title』

「今後の需要の伸びに見合うだけの持続的な投資インセンティブをネットワーク事業者に与えられるか」というトレードオフの点ですが、インフラ投資へのインセンティブって、経済学的に数量化できるものなのでしょうか。ちなみに、ちょっと見たところ(*)によれば、かなりの国において、ブロードバンドへのインフラ投資は政府がかなり関与している例も多く、その意味で「民間のバックボーンが儲からなくなること」がどこまでインフラ投資へのインセンティブにネガティブに働くかは議論の余地がありそうな気もしたりしています。つまり、政府の関与等を調整することで、ある程度効果的にネットの中立性による再度エフェクトを減らせないのかな、という問題意識なのですが。(余談ですが、EUでは過度な政府主導のインフラ投資がEU加盟国間での協定との関係で問題があったりする、という別の論点が有り得たりもするのですが。。)

(*)http://cyber.law.harvard.edu/newsroom/broadband_review_draft

2009/12/20(日) 01:46:58 | URL | [ 編集]

珈琲男

『ありがとうございます』

かなり読み応えのある報告書ですね。ありがとうございます。ハーバードのローにはこんなセンターがあるんですね。

ブロードバンドのインフラ投資に政府が関与することの影響は相当大きいと思います。問題は具体的にどう関与するのが最も効果的なのか、さらに、一切関与しないことに比較してどう評価すいう効果があるのか、という点なんでしょうね。特に短期的な効果と長期的な効果をそれぞれ分けて考えるのは大事なポイントだと思います。

2009/12/22(火) 01:47:29 | URL | [ 編集]

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