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「私を離さないで」における「提供者」

カズオ・イシグロ「私を離さないで」を昨晩一気読みした。原題「Never Let Me Go」。その前の晩は「ハゲタカII」の上・下巻を一息に読んだばかり。読書三昧のこの冬休み。今は村上春樹の「海辺のカフカ」に移っている。手当たり次第の乱読。

わたしを離さないでわたしを離さないで
(2006/04/22)
カズオ イシグロ

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「私を離さないで」は間違いなくこの何年かの間に読んだ小説のなかでは最大の衝撃。ネタバレが大きく響く作品だから、そのプロットには触れるまい。プロットと並ぶもうひとつの衝撃は、子供の時に自分が感じていたこと、ただし感じていたことすらすっかり忘れていたものを、今さらながらにリアルになぞられたかのような感覚。そうした感覚をリアルに覚えているのがカズオ・イシグロのすごさなのか、それとも、そうした感覚を観察眼と論理なりで探求しきれてしまうのがすごいのか。

冒頭から圧倒的に存在するこの小説の違和感は、「介護人」と「提供者」なるものが一体何なのか、というところから来ているのだろう。そして、「介護人」がいつか「提供者」になる、とは何を意味するのか?原文にあたってみたところ、「介護人」「carer」の訳でまあそんなものだろう。しかし「提供者」の訳を充てられたあの英単語を訳者がそのままカタカナ表記していたなら、きっとこの小説の雰囲気が随分と変わっていたことだろう。謎めきの色はより押さえられ、違和感は(大きく残るにしても)相当薄れ、そして全体の筋が分かったときの衝撃がもっと和らげられていたはずだ。あの英単語にカタカナ表記を充てるか「提供者」と訳すかは、訳者も相当悩んだはず。

珈琲男はこの訳に反対する。作者自身が選択したあの英単語がもつ意味の幅より、訳者(もしくは出版社の担当者、か?)が選択した「提供者」の意味する幅が圧倒的に大きいからだ。

作者はこの作品をミステリーやSF仕立てにすることを避けたかったと述べている(注1)。あの英単語は、そんな意図を持つ作者が選択したものだったわけだ。ならば、「提供者」というずっと意味の幅が大きい日本語の選択により、謎解きの要素をあまりに大きくしてしまったことが、訳者としてとどまるべき一線を越えてしまったように珈琲男には思えるわけだ。もっとも「提供者」という選択が、日本語版「わたしを離さないで」を小説としてより面白いものにした側面もある。柴田元幸なら、これをどう訳したのだろうか。そして、日本を5歳で離れいまだに一応日本語もできるというカズオ・イシグロ自身は、この選択をどう考えているのだろう。

そうそう、友人に教えてもらったところによれば、この小説の映画化が既に着手されており、今年にも公開されるそうだ。脚本は、「The Beach」の作者アレックス・ガーランド。

注1:大野和基「Behind the Secret Reports」でのインタビュー記事より。ただし、ネタバレ必至なので、小説をこれから読む人はアクセスしないことを強くお奨めする。
http://www.globe-walkers.com/ohno/interview/kazuoishiguro.html
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2010/01/05(火) | 雑感 | トラックバック(0) | コメント(0)

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